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ショートSS
「ヴィレッジプリンセス〜 <<ある夏の日の風景>>」

真夏の青い空に太陽が輝いていた。
都会ではジリジリと体を焼きつくされるよう感じる日差しも、この田舎ではなぜか心地好く、全ての生命に活力を与えてくれる、癒しの光に思える。
せみの声の大合唱もやかましいとは感じず、これから始まる素敵な夏の前奏曲のようだ。
ときおり吹く風はさわやかで、青々と育つ田畑の草花を揺らしていた。

そんな、とある片田舎の、畑のあぜ道を、幼い少年と少女がちょっと急ぎ足で歩いていた。

少年は、野球帽にランニングシャツと半ズボンといった服装で、日焼けした手足からは、日が暮るまで遊んでいそうな、元気いっぱいの男の子という印象を受ける。
少女は、ツバの広い円形の帽子に淡い黄色のワンピースを着ていて、あまり日焼けはしていない。少年とは対照的に大人しそうな感じで、とても女の子らしく可愛らしかった。

「かほちゃん、こっちこっち!」
「まもるちゃん、まって〜」
足場の悪い道をひょいひょいと歩いていく少年に比べて、少女は足下を確かめつつ、ときおりふらつきながら、そろそろと歩いている。

やがて二人は林の中を通り抜け、川辺に出た。

その川は広くはないが、流れる水はゆったりとして早くない。
川底が見えるくらい、水は澄んでいて、ちいさな魚がスイスイと泳いでいる光景は、眺めているだけでも涼しげだ

「ほら、川の水が冷たくって、気持ちイイよ」
「ほんとだぁ〜」
二人は川岸の岩の上にしゃがみ、川に手を差し込んで、涼を感じた。

「よおーっし!かほちゃん。ココで泳ごうよ!」
少年はすっくと立ち上がり、少女に向かって言った。

「えっ!?・・・でも、かほたち、みずぎ持ってきてないよ」
少女は当然の疑問を少年に投げ掛ける。

「あはは、だれも見ていないから、ハダカで泳いでもだいじょうぶだよ」
「えーっ!」

少年は ─いや、服装や言動から男の子と思っていたが、その少年は女の子だった─
あっというまに服を脱ぎ捨て、ドボンと川に飛込んだ。

「うわぁーっ、気持ちイイ!・・・ほら、かほちゃんもおいでよ!」

川へ飛込んだ少女が、川の中から手を振る様子に、川岸にとり残された少女は、心にウズウズするものを感じた。

「あ〜ん、かほも泳ぐ〜」

少女は服を脱ぎ、小さく折り畳んで大きめの石の上に置くと、おそるおそる川の中に入っていった。

・・・

バシャバシャと水面を弾く音と、きゃっきゃという少女たちのにぎやかな声が聞こえてくる。
見上げれば、青い空には白い入道雲がニョキニョキと生えていた。

- 終わり -


このSSはONAさんお絵描き掲示板に掲載されました、ヴィレッジプリンセス〜をイメージして書きました