お兄ちゃまのお言いつけで、
兄妹じゃないことは隠しているけど・・・
二人だけの秘密・・・ドキドキしちゃうね(はぁと)
秘密の花園
昼休み時間、僕は学校の裏庭にある花壇へと急いでいた。
「今日は、チアの昼練はないって言ってたし、この時間ならいるよな」
茂みの脇を抜け、石畳の通路を通ると、その先が花壇になっている。
こじんまりとした花壇なので、昼休み時間でも、ここにやってくる人はほとんどいない。
垣根の角からひょいと中をのぞくと
<いた!>
花壇の中央付近に制服を着た女の子がしゃがんでいた。
こちらに背を向けているので、何をしているのは見えないが、先ほどからせわしなく手を動かしている。
「花穂」
僕は、その女の子を驚かせないように優しく呼びかけた。
「?」
女の子は振り向くと、僕の顔を見て、明るい笑顔をした。
「お兄ちゃま!」
女の子は弾かれたように立ち上がり、こちらに走ってくる。
「花穂、そんなに慌てたら、・・・あっ」
花穂は足がもつれたようして転んだ・・・いや、転びそうになった。
転ばなかったのは、僕が間一髪で花穂を抱き止めたからだ。
「そんなに慌てたら危ないよ」
僕は胸の中に顔をうずめてる花穂に話しかけた。
「えへへっ、だって、お兄ちゃまに会えてうれしかったんだもん」
花穂は僕にギュッと抱きついて言った。
僕は、しばらく、花穂を抱き留めていた。
心地よい風がさわさわと花穂の髪を揺らしている。
「あーーーっ」
突然、花穂がバッと僕から離れた。
「どうしたの?」
「やっぱり、花穂ってドジっ娘なんだ」
「???」
訳が分からない。
「ごめんなさい、お兄ちゃま、花穂、お兄ちゃまのお洋服よごしちゃった。・・・ど、ど、どうしよう」
すでに涙目になっておろおろしている花穂。
僕は自分の服を見た。
「あっ」
制服の腰のあたりが泥だらけになっていた。
花穂を見ると手は土でよごれている。
<そうか、花壇の手入れをしていたから、手が泥だらけになって、それで僕に抱きついたから・・・>
「ふえーーーん、おにいちゃま、ごめんなさい。花穂、花穂・・・」
泣き出す寸前の花穂。
「だいじょうぶだよ花穂、これくらいどうってことないよ。ちょっと泥を払えば・・・」
僕は手で制服の汚れを払う。
「・・・ほら、大丈夫」
まだ、少しよごれているが、ほとんど目立たなくなった。
「・・・ホントに」
「ホントだよ」
「花穂のこと怒ってない?」
「ぜんぜん、怒ってないよ」
「・・・えへへっ、よかった。」
花穂は笑顔になった。
「あの、お兄ちゃま、・・・お洋服汚してごめんなさい」
「もう、気にしていないよ」
「お兄ちゃま、・・・花穂、ドジばっかりだけど、・・花穂のこと見捨てないでね」
「ははは、僕が花穂を見捨てるわけないじゃないか」
僕は、花穂の頭を優しく撫でた。
・・・
それから、僕と花穂は一緒に花壇手入れをした。
「こんどはね、こっちに種をまこうと思ってるの」
「うん」
「そしたらね、春になったら、お花でいっぱいになるの。とーってもきれいだと思うんだぁ」
「それは、素敵だね」
・・・
花壇の手入れをした後、そばにある水道で手を洗い、近くのベンチに腰掛けた。
しばらく花壇に咲く花を眺めていると、花穂は、あたりをきょろきょろと見渡し、すりすりと僕との間隔を狭めてきた。
「お、お兄ちゃまぁ、今、二人っきりだから、・・・い、いいよ、ね」
花穂は真っ赤になりながら僕に聞いてきた。
僕は何も言わず花穂の肩を抱いた。
花穂は僕の肩にもたれかかって目を閉じた。
穏やかな午後の一時
二人だけの秘密の時間
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