トップページに戻る

SSのページに戻る


朝の風景


ピピピ、ピピピ、ピピピ・・・カチッ

「ふあぁ・・・おはよう、お兄ちゃん」
可憐の一日は、お写真のお兄ちゃんに挨拶することから始まります。

「あ!いけない」
お兄ちゃんに挨拶をしてから、慌てて鏡を見ました。

「よかった、寝癖はついていないみたい・・・」
お写真だけど、やっぱりお兄ちゃんの前では、きちんとしていたいです。

可憐、寝相は悪くない方なんだけど、ときどき、寝癖がついているときがあるの。
この前、お兄ちゃんの夢を見たときは ─どんな夢だったかはナイショです─ 髪の毛がすごい跳ねちゃって、もう元に戻すのがとってもたいへんだったのよ。
でも・・・うふふ、寝癖がつくのは嫌だけど、お兄ちゃんの夢は、またみたいな(はぁと)


今日の朝ごはんは、トースト、ポーチドエッグ、トマトとオニオンのサラダ、フルーツヨーグルト、オレンジジュースでした。
可憐のお家では、朝ごはんはいつもパンです。

そうだ、パンと言えば・・・
昔、可憐がまだお兄ちゃんと一緒に暮していたころ、お兄ちゃんはお寝坊さんで、よく朝食を食べなかったりしていました。

でも、あるとき、ママがパンだけでも食べていきなさいって言って・・・そしたらお兄ちゃん、すごい勢いでパンを食べちゃったの。
それでね、可憐、お兄ちゃんの真似をしたくなって、パンを急いで食べようとして、無理やりお口に詰め込んで・・・大騒ぎになったことがあったっけ。

それからは、お兄ちゃん、どんなに急いでいるときも、可憐の前では、ゆっくりと食べるようしていました。
うふふ、やっぱりお兄ちゃんは優しいです。お兄ちゃん大好き(はぁと)


朝ごはんの後、お部屋に戻って制服に・・・
あっ、お兄ちゃん。ちょっとだけあっちを向いていてくださいね。
写真立てを裏返しにして制服に着替えます。

それから髪を三つ編みにして・・・
可憐は髪を三つ編みにしてるんだけど、それは、昔、お兄ちゃんにしてもらったからなの。
可憐はそれからずっと髪を三つ編みにしています。

「うーん・・・今日は、ちょっと変えてみようかな?」

ポニーテイル?
それとも、左右に髪をわけてリボンで留めて
髪を編んで後ろで纏めようかな?
それとも・・・

どんな髪型だったら、お兄ちゃん、気に入ってくれるかな?

でも・・・髪型を変えて、お兄ちゃん、可憐だってわからなくなっちゃったらどうしよう・・・
やっぱり、いつもの通りの方が・・・いいの、かな?

・・・

「うん。いいみたい」

鏡でチェックして、えへへ、今日は三つ編みのところをちょっとだけ変えてみたんだけど・・・お兄ちゃん、気付いてくれるかな?


あっ、もうこんな時間!
早くしないと、間に合わなくなっちゃう!

今から家を出ても、可憐の学校には間に合うんだけど・・・
お兄ちゃんの通学路を行くと、ちょっとギリギリの時間になっちゃうの。
可憐、お兄ちゃんと一緒に登校したいから、少しだけ遠回りです。


「わぁ、いいお天気」
今日も、朝からすっきりした空です。

可憐は晴れの日が大好きです。
青く晴れ渡った空を見ていると、心がすーっと軽くなってきて、お兄ちゃんの元にすぐにでも飛んでいけそうな、ウキウキした気分になってくるんです。

あっ、でも雨の日もいいかも・・・
この前ね、予報では曇りだったのに、お昼過ぎから急に雨が降り出したことがあって、可憐は、折り畳みの傘を持っていて大丈夫だったんだけど、お兄ちゃんは傘を持っていなかったらしくって、お店の軒下で、雨宿りをしていました。

それで、可憐「可憐の傘に一緒に入りませんか?」って言いました。
お兄ちゃんは、大丈夫だよって言ってたけど、雨はぜんぜん止む様子がなくて・・・結局、可憐の傘でお兄ちゃんと一緒に帰ることになりました。

可憐の傘は、二人で入るには、ちいさくて、おもいっきりよらないと雨に濡れちゃうみたい。
うふふ、可憐、「もうすこし寄らないと雨に濡れちゃいますよ」って言ってお兄ちゃんにぴったりくっついちゃいました。きゃっ(はぁと)

そんなことがあってから、可憐、雨の日も好きになりました。

折り畳みの傘も新しく買ってきて・・・可憐のもっていた傘は赤い色で、お兄ちゃん、赤い色の傘に入るのは恥ずかしかったみたい。
だから可憐、今度の傘は、黒い色にしました。
これだったら、お兄ちゃんも恥ずかしくないよね。
あっ、でも傘の大きさは、ちょっとだけ小さめにしました。えへへっ(はぁと)


お兄ちゃんのお家の近くに大きな木があって、可憐はいつもそこで待っています。

本当はお兄ちゃんのお家まで行きたいんだけど、やっぱりご迷惑になっちゃうかもしれないし、お兄ちゃんにずうずうしい妹だって思われちゃったら、可憐、どうしたらいいのかわからなくなっちゃう
だから、可憐は、ここでお兄ちゃんを待っています。

お兄ちゃんを待っているときはいつも、早くお兄ちゃんに会いたい!って思うんだけど・・・でも、昨日はピアノがとっても上手く弾けたのよとか、新しくできた喫茶店のパフェが美味しいってウワサなんだってとか・・・お兄ちゃんとどんなお話しようかなって考えていると、可憐、とっても幸せな気分になってきます。


あっ、向うからやってくる人は・・・
お兄ちゃんです!

えっと、髪の毛、変になってないよね。
髪の毛を手で整えて・・・

すぅ、はぁ
一回だけ深呼吸をして・・・


「おはよう、お兄ちゃん。可憐ですよー」

お兄ちゃんはちょっとだけ眠そうなお顔で、でも、いつもの優しい笑顔でした。
うふふ、今日も良い日になりそうです(はぁと)


感想などを、メールで送ってもらえれば、管理人は狂喜乱舞いたします。