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ボクの好きな人


ボク、むかしっから男の子みたいでさ
じっさい、男の子と一緒に遊んでたことが多かったんだ。
木登り、鬼ごっこ、カン蹴り・・・

ほんと、泥だらけになるまで遊んでて、よく、お母さんに怒られてたっけ。
えへへ、あにぃも一緒になって怒られてた。

お母さんは、もっと女の子らしくしなさいって、いっつも言ってたけど、
でも、あにぃはそんなことお構いなしで、ボクと遊んでくれたんだ。

中学校に行くようになってからは、あにぃと遊ぶこともめっきり少なくなって、
それでも、ボク、男の子にまじって遊んでいたんだ。

でも、最近、クラスの男の子は、ボクをあんまりさそってくれなくって・・・
あーあ、退屈だなぁ


それで、この頃は、女の子の友達と話すことも多くなったんだ。

みんなは、
「このまえ、可愛いアクセサリーショップ見つけたんだよ」とか
「あの通りの角にあるケーキ屋さんの抹茶パウンドケーキが美味しいよね」とか
うーん、女の子の会話だなぁ・・・ってボクもいちおう女の子なんだけどね。

でも、ボク
「新型のMTBってカッコイイね」とか
「今年は新しいボード欲しいな」とか
そんな話をしたいんだけどなぁ・・・はぁ


そんなこと考えてたら、いつのまにか、好きな男の子の話になってて
「ケンジ君のサッカーしてる姿ってカッコイイよね」とか
「タカシ君って、大人っぽいカンジですてき」とか

うわぁー、ボク、こういうの苦手だな・・・


それで、ボク、そろそろ帰ろうかなって思って、席を立とうとしたら
あゆみちゃんが「衛クンはだれが好きなの?」って

え、え、えええーーーーーっ!
ボ、ボ、ボク?

ボクにはそんな人いないよ!って言おうとしたら

「隣のクラスのえりこちゃんとかどう思う?えりこちゃんって、大人しいかんじで、カワイイよね」
「えーっ、みきちゃんの方が、衛クンには似合ってるよ!」
「そうかなぁ、わたしはともみちゃんが・・・」

みんな、ワイワイ騒ぎだして、でも出てくるの全部オンナノコの名前だった。

それでね、ボク、おもわず言っちゃったんだ
「ボクの好きな人は、オトコの人だよ!」って

そしたら、みんなシーンとなって・・・

ボク、急に恥ずかしくなって
「ボ、ボク、用事を思い出したから帰るね!」
って言って、飛び出したんだ。
あー、恥ずかしー


変なことを言って、恥ずかしいってのもあったんだけど、
あのとき、ボク、あにぃのことを思い浮かべていたんだ。
そりゃ、ボクはあにぃのことが、す、好き、だけど・・・
でも、みんなが言っている"スキ"と、ボクがあにぃを"スキ"なのは、ちょっと違う気がするんだ。
なにが違うのかって聞かれると困るけど・・・


翌日、学校に行ったら、なんかクラスの雰囲気がいつもと違ってて・・・

「ねぇねぇ、衛クンって好きな男の子がいるんだって」

みんなはヒソヒソ話をしていたみたいだったけど、こんなにあちこちで言ってたら聞こえちゃうよ
あーあ、ボク、あんなこと言わなきゃよかった。


放課後になって、ボク、さっさと帰っちゃおうと思ってたら、玄関のところで、ケンジ君に呼び止められて、
ボク、そのとき、てっきりサッカーにさそってくれるんだって思ってた。

だから、すっごいうれしくて、ケンジ君についていったんだけど、
でも、ケンジ君につれてこられたのは校舎裏の人気のないところ。

ボクが「なんか用なの?」って聞いたら
ケンジ君は、「あ、その、・・・えっと・・・」
いつもはハキハキしてるのにどうしたんだろ?

「あの!・・・クラスの女子から聞いたんだけど、ま、衛って、好きなヤツがいるんだって?」

ボク、そんなこと聞かれるってゼンゼン考えてなかったから、ビックリしちゃって・・・

ケンジ君はボクに詰め寄るように聞いてきたんだ
「そ、それって、どんなヤツなの?」
「え、えっと、それは、その・・・」
「やっぱりスポーツとかやってるの?」
「ええっと・・・その人は・・カッコよくって、なんでもできて、ボクより走るのも速いし、力も強いし、いざというときでも落ち着いていて・・・すっごく頼りになるんだ」
「そ、そうなんだ・・・」
「うん、ボクのあにぃはスゴイんだよ!」

ボクがそう言ったら
「えっ、お兄さん!・・・なあんだ、お兄さんか」
ケンジ君は、急にほっとした表情になって
「そうなんだ・・・急に呼び出してゴメン!」
って言って走っていったんだ。
ケンジ君、何したかったのかな?

でも、ボク、さっき言ったことを思い出して、顔が熱くなっちゃったよ
これって、ボクがあにぃのこと"スキ"だから、なのかな?


それで、家に帰る途中 ─あにぃのこと考えてたからかな?─ 偶然、あにぃに会ったんだ
どうしよう、ボクの顔、真っ赤になってないかな?

ボク、なんか恥ずかしくって、うつむいて何も言えずにいたら、あにぃはボクのこと気遣ってくれて
「衛。こんどの休みに、どこか遊びにいかないか」
「ほ、ほんと!・・・じゃあね、サイクリングに行こうよ!風を切って走るのって、きっと気分もスカッとするよ」

ボクの好きな人は、あにぃなのかな?

うーん・・・
えへへ、よくわかんないや

よくわかんないけど・・・今は、あにぃと一緒にいるのが楽しいから、それで、いいかな?


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