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朝まで側にいて


それは、私が中学生のときの話。

・・・

ちょうど、私とお兄様が離れて暮すようになったころで、お兄様には「お兄ちゃんの日」にしか会えなくなっていた。

私、お兄様と離れて、初めてわかったことがあるの
お兄様の存在が、私にとってどれだけ大きかったかってこと・・・
お兄様と一緒に暮していたころは、ぜんぜん気が付かなかったけど、お兄様と離れていることが、こんなに辛いなんて、知らなかった。

毎日毎日、考えるのはお兄様のことばかり

お兄様、朝起きられるかしら?
お兄様、ちゃんと食事してるかしら?
お兄様、今、なにを考えているのかしら?

お兄様、浮気なんてしてない、わよね


だから、2ヶ月に一回の「お兄ちゃんの日」が、もう待ち遠しくって
その日が近づいてくると準備で大忙しなのよ

こんどのデートでは、どんなお洋服を着ていこうかしら?
もう、秋だからシックに大人っぽくきめるのもいいかも
それとも、パンツスタイルにしてアグレッシブさを出すのもアリかな?

あっ、そうだわ
この前買った、秋色のリップ
ちゃんとお兄様の好みに合わせて選んだんだから

フフッ、お兄様の目が他の女の人に向かないように、おもいっきりおシャレしないとね

こうやって、今まで以上に、キレイに力を入れるようになったのは、離ればなれになったからかもしれない
そうだわ、こんなことぐらいで、私のお兄様への想いは止められないのよ!

でも・・・
離れて暮していると、お兄様の気持ちが、だんだん私から離れていっちゃうんじゃないかって思って・・・とっても心配になるわ
それに、私が側にいないのをいいことに悪いオンナがお兄様を誘惑してるんじゃないかって・・・

ううん、こんなことじゃダメ!
これはきっと、神様が私たちに与えた試練なんだわっ
お兄様、私たち、この試練に耐え抜いて、バラ色の未来を目指しましょうね


そしていよいよ「お兄ちゃんの日」。
その日は、よく行く、街の大通りでショッピング
ちょっと普通すぎるかなとは思ったけど・・・でも、お兄様と一緒だと、いつもの風景もぜんぜんちがって見えて
エヘヘ、ちょっと、たくさんお買い物しちゃったかな
それから、おシャレなカフェで、休憩して・・・

でも、楽しい時間って、あっというまに過ぎ去ってしまうのね

夕方になって、いつもだとお兄様が帰ってしまう時間。
でも、その日は、どうしてもお兄様と夜を共に過したかったから、私、必死でお願いしたの
「お兄様。今日は、お泊まりして・・・ねっ、お願い」

お兄様はしぶしぶ承諾してくれて・・・
ごめんなさい、お兄様、私、わがままよね
でも、今日だけはお願い・・・


お兄様と一緒の時間。
本当は、話したいこと、やりたいこと、いっぱいあったんだけど
私、今夜のことを考えていて・・・
それがちょっと不自然だったのかしら

「咲耶。今日は、いつもより静かだけど、何かあったの?」
「えっ、ううん、なんでもない」

お兄様ってば、こんなときだけスルドイのね


そして、もう寝る時間になって・・・私、いちおう言ってみたけど、やっぱりお兄様は、別々の部屋でって
「それじゃあ、おやすみ、咲耶」
「おやすみなさい、お兄様」

ちょっとだけのお別れね、お兄様


深夜になって・・・もうお兄様もぐっすり眠っているころよね
私は、自分の部屋を抜け出して、お兄様が眠っている部屋へ行ったの

スー、スー
お兄様は静かに寝息をたてて眠っていた。

ちょっと残念な気もしたけど、だって、夜暗い部屋の中、ふたりっきりでお話するのってドキドキしちゃうでしょう?
でも、今日は、眠っていてくれて、ほっとしたかな

それから、お兄様のお布団に潜り込んで・・・


私、どうしても、お兄様と一緒のベッドで眠りたかったの

お兄様と離れて暮すようになってから、私、毎日イヤな夢ばかり見ていた。
夢の中で、私、お兄様を必死で探すのだけど、お兄様はどこにもいなくって・・・
私、大声で泣いているのに、お兄様は来てくれなくて・・・一人ぼっちなの

だから、私、思ったの
お兄様と一緒のベッドで眠れたら、素敵な夢を見られるんじゃないかって
お兄様と一緒に過す、幸せな夢を、きっと見られると思うから、だから・・・

お兄様、夢で会いましょう


翌朝、隣に寝ていた私を見て、お兄様、とても驚いてた
「な、なんで、咲耶がここに!?・・・ダメだ、思い出せない・・・」
ウフフ、ちょっとあたふたしているお兄様カワイイ


それから・・・とうとうお兄様とお別れする時間
玄関先で見送りしようとした私は、どうしようもないくらいに悲しくなって・・・
大声でわんわん泣き出した

私、お兄様の目の前で、こんなに大声で泣いたことって初めてだったわ
お兄様、驚いちゃったわよね

でも、お兄様は泣いている私を優しく抱きしめて・・・
私にそっとキスしてくれたわ
「また、来るから」


・・・

思い出したら、なんだか恥ずかしくなってきちゃった
でも、そのおかげかしら、あれからは、お兄様、「お兄ちゃんの日」には、お泊まりしてくれるようになったの
ウフフ、きっと私の想いがお兄様に通じたのね
お兄様、ラブよ

でも、お兄様、あれから、一回もお別れのキスをしてくれないのはどうしてなの?
やっぱりウソ泣きじゃダメ、かしら


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