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風邪のお薬



お兄ちゃまがお風邪をひいたってママから聞きました。
もしかして昨日の・・・
あのね、お兄ちゃまがお風邪をひいたのは花穂のせいかもしれないの

それは昨日のこと・・・

昨日、花穂、寝坊しちゃって急いで学校に行く準備をしたからコートとか手袋とか忘れちゃって、でも、朝はそんなに寒くなかったし、どっちかって言うと少し暖かいぐらいだったから、花穂もいいやって思ってたの
だけど、お昼過ぎぐらいからどんどんお天気が悪くなっていって、学校が終わるくらいには、雪が降り始めてました。

花穂、雪はキライ
だって雪が降ると、花穂、いつもよりたくさん転んじゃって、オシリを打って痛いし、冷たいし
それにお靴がびしょびしょになっちゃうし・・・もうサイアクなの

あっ、でもこの前、雪が降ったときは、帰り道に偶然お兄ちゃまに会ってね
お兄ちゃまは「転ぶと危ないから手をつなごう」って言ってくれたんだぁ
お兄ちゃまの手はとっても暖かで、花穂もとっても暖かくなって・・・
花穂、お兄ちゃまと一緒だったら、雪は大好きかな。えへへっ

それで、花穂、お家に帰ってたんだけど、雪はどんどん降ってきて
あーん、今日はコートと手袋、忘れてきちゃったから、寒いよーって思ってたの

そんなとき
「花穂」
「あーっ!お兄ちゃま!」

お兄ちゃまは花穂のこと全部わかってるみたい、花穂が困ったときは、いっつも花穂を助けてくれるんだよ

花穂がコート着てないのを見ると、お兄ちゃまは「寒いだろう?」ってお兄ちゃまのコートを花穂にかけてくれました。

「でも、お兄ちゃまがお風邪をひいちゃうよぉ」
「ははは、これくらいなら大丈夫」

花穂、そのとき、やっぱりお兄ちゃまは優しいなぁって思いました。

でも・・・でもね、花穂、聞いちゃったの
お兄ちゃまが花穂にわからないように小さくくしゃみしてたのを・・・



やっぱり、花穂のせいだ・・・
花穂のせいで、お兄ちゃま、風邪ひいちゃったんだ。
どうしよう、花穂、また、お兄ちゃまにご迷惑を・・・

だからね、花穂、思ったの
今日は、お兄ちゃまのお見舞いに行こう!
花穂のせいで、お兄ちゃま、風邪ひいちゃったんだから、花穂が看病してあげなくっちゃ!



お兄ちゃまのお家に行ったら、お兄ちゃまはお布団に横になってました。

「お兄ちゃま、だいじょうぶ?」
「うん、花穂のお顔をみたらだいぶ良くなったよ」

お兄ちゃまはそう言ったけど、あんまり顔色はよくないように見えて・・・
お兄ちゃま、ごめんなさい。花穂のせいで・・・
よぉーし、花穂、がんばって、お兄ちゃまの看病をするぞぉ!


「お兄ちゃま、ちょっとお台所借りるね」
えへへっ、花穂、今日はお兄ちゃまにおかゆをつくってあげるんだぁ
花穂、ママに教えてもらって、おかゆぐらいなら作れるようになったんだよ

「これをこうして・・・あとは煮るだけ・・・うん、うまくいきそう!」

えへへ、これを食べたら、きっとお兄ちゃま、元気になるよね
そうなったら、お兄ちゃま、花穂のことほめてくれるかなぁ(はぁと)

『ありがとう、花穂。花穂のおかげで、とっても元気になったよ』
『花穂、たいしたことしてないよ』
『ううん、僕が良くなったのは全部花穂のおかげだよ。ご褒美に花穂の言うことなんでも聞くよ。花穂、何かしてほしいことある?』
・・・

「えっとね、花穂ね・・・」
「花穂?なんだか焦臭いんだけど」
「お兄ちゃまと〜(はぁと)二人で〜(はぁと)・・・」
「花穂!お鍋がこげてるよ!」
「ええっ!?あぁーっ!!」
・・・


「お兄ちゃま、ごめんなさい」
「花穂がやけどしなくてよかったよ。でも火を使うときは気をつけようね」
「はーい」

あーん、花穂、失敗しちゃったよぅ
もう、花穂のおバカ!
うわーん、お兄ちゃま、あきれちゃったかなぁ
・・・
はっ、いけない、いけない
こんなんじゃ、ダメだよね
よおーし、花穂、次はがんばるぞぉ!


「じゃあ、花穂、お部屋のお掃除するね」
「えっ!?・・・そんなに気を使わなくてもいいんだけど」
「えへへ、だいじょうぶ!花穂におまかせ♪」

花穂、こんどは失敗しないようにがんばらなくちゃ!



ブオーン

お掃除は、掃除機をかけるだけだから、花穂にだってできるよね
えへへ、今度こそ、お兄ちゃまにほめてもらえるかなぁ

ゴンッ
「?・・・きゃあ、花瓶が」

ガチャーン

「花穂、大丈夫かい!」
「ふえーん、お兄ちゃま・・・花穂、花穂・・・」

花穂、お兄ちゃまの看病に来たのに、お兄ちゃまのご迷惑になることばっかり・・・



「花穂、ゴメン・・・ちょっと休むから・・・」
お兄ちゃまはそう言って、倒れるように布団に横になりました。

どうしよう・・・花穂のせいだ。
花穂が変なことばっかりしてるから、お兄ちゃまの風邪がひどくなって・・・

お布団に寝ているお兄ちゃまを見て、花穂、悲しくなってきました。

花穂、お兄ちゃまの看病に来たのに、失敗ばっかりで、お兄ちゃまにご迷惑をかけて
・・・


花穂、お友達に聞いた、風邪に良く効くおまじないをすることにしました。

お兄ちゃま、ごめんなさい。花穂、お兄ちゃまが良くなるようにお祈りすることしかできないの
お兄ちゃま、早くよくなってね・・・

チュッ


花穂ができるのはこんなことだけ
こんなことだけなんだ・・・
花穂・・・

花穂、もう帰るね



「花穂、もう帰るの?」
帰ろうとした花穂をお兄ちゃまが止めました。

「だって、花穂、お料理もお掃除も失敗しちゃって・・・お兄ちゃまに何にもしてあげられないし」
「料理を作ったり掃除をしてあげることだけが看病じゃないよ」
「でも・・・」
「・・・花穂。病気の人が一番欲しいものってなんだと思う?」
「えっ!?・・・うーんと、なんだろう?お薬かな?」
「どんなお薬だと思う?」
「風邪のお薬?」
「実はね、どんな病気にも効くお薬があるんだよ」
「どんな病気にも・・・そんなお薬があるの?」
「うん、それは、心のお薬、だよ」
「心のお薬?」
「花穂は、僕に良くなってほしいから、お見舞いに来たんだろう?」
「うん」
「だから花穂が僕の心のお薬だよ」
「・・・うん」

花穂、お兄ちゃまの言ってることがよくわからなかったけど、きっと優しいお兄ちゃまのことだから、何にもできなくて落ち込んでる花穂を励ましてくれたんだと思うの
ごめんなさい、お兄ちゃま。花穂、お兄ちゃまにご迷惑をおかけしてばっかりで
でも・・・いつかきっと
花穂、お兄ちゃまのお役にたてるようになるから
きっとなるから
だから・・・花穂のこと・・・
・・・



翌日

「コホッコホッ」
「37.5・・・ちょっと熱があるわね。今日はお薬を飲んで静かに寝てなさい」
「はーい、ママ」

お兄ちゃまのお風邪は良くなったって聞いたんだけど、今度は花穂が風邪ひいちゃいました。グスン。


「コホッコホッ」
こうやって、昼間からベッドで寝ていると、なんだか花穂一人ぼっちになったみたい。
時計をみたら、学校ではちょうどお昼休みの時間。
今日の給食は何だったのかなぁ・・・花穂の好きなグラタンかなぁ
そういえば、お昼休みにみんなで遊ぶ約束してたっけ・・・今ごろ、みんな楽しく遊んでるのかなぁ

花穂、とっても寂しくなって、泣きそうになりました。
お兄ちゃまも、昨日は、こんな気持ちでいたのかなぁ
・・・


「花穂、大丈夫かい?お見舞いに来たよ」
「あっ、お兄ちゃま」

花穂、お兄ちゃまのお顔を見たら、今までの寂しい気持ちがいっぺんになくなりました。

そのとき花穂、昨日のことを思い出して・・・
『実はね、どんな病気にも効くお薬があるんだよ』
『どんな病気にも・・・そんなお薬があるの?』
『うん、それは、心のお薬、だよ』
『心のお薬?』
『花穂は、僕に良くなってほしいから、お見舞いに来たんだろう?』
『うん』
『だから花穂が僕の心のお薬だよ』

それで、花穂、やっとわかったんだぁ
昨日、お兄ちゃまが言っていた"心のお薬"の意味が・・・

「わっ、花穂、急に抱きついたりして・・・ちゃんと寝てないとだめじゃないか」
「えへへっ、だってうれしかったんだもん」

花穂が寂しいとき、悲しいとき、つらいとき、いつも助けてくれる優しいお兄ちゃま。
お兄ちゃまが花穂の一番の"心のお薬"です。


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あとがき

風邪で寝ていたとき、花穂が看病に来てくれたらなぁ、と妄想してました(笑)
花穂が看病に来てくれたら、きっと・・・大騒動になりそうです(笑)


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