思い出の味 姫、最近悩んでますの それは、にいさまに作ってあげるお料理のこと 「えーっと、昨日はビーフシチューでしたから、今日はお魚を使った料理にしようかしら?・・・あっでも、この間、海の幸てんぷら盛り合わせでしたから、別のにした方が・・・そうですの!たまには中華風に・・・うーん、そういえば、この前のお休みの日に、にいさまと一緒に餃子を食べたばっかりでしたの・・・」 はぁ・・・ 姫、にいさまのためにいろいろとお料理を作ってきましたけど、最近、料理のメニューに困ってしまったんですの にいさまが飽きないように、似たような味のお料理が続かないようにと工夫しているんですけど、新作メニューはそう簡単に作れるものではないし、かといって数日前と似たようなメニューをだすなんて、姫のにいさまのお料理番としてのプライドがゆるさないですの それに、にいさまの健康を考えたら、いろんな食材を使ったお料理を作りたいし、でも最近はお野菜の値段が高くて、いろいろ研究するのにもたいへんで・・・ はぁ・・・ 毎日毎日、いろんなお料理のメニューを考えるのってちょっとたいへん! でも、にいさまにお出しするお料理だから、手抜きなんてぜったいにできないんですの んもう、姫がこんなに悩んでいるのは、にいさまにも原因があるんですのよ だって、にいさまはいつも「白雪の作ってくれる料理はみんな美味しいよ」って言って、なんでも好き嫌いなく食べてくれて、それで、姫はにいさまの笑顔がみられてとってもとってもしあわせな気分になるんですけど でも、姫が作ったお料理はどんなものでも「美味しいよ」って言ってくれるから、姫、どんな料理を作って良いのか、わからなくなってきましたの にいさまが一番好きなお料理って、何ですの? 姫、にいさまに作ってあげた料理を思い出しながら考えたんですけど、姫の記憶の中のにいさまは、美味しそうに食べるにいさまの姿ばっかり これじゃあ、ぜんぜんわからないですの! それで姫、にいさまに直接聞くことにしました。 いつもは、にいさまをビックリさせたいから、どんなお料理を作るかはナイショにしているんですけど にいさまのリクエストに応える形も、新鮮な感じで良いかなって、姫、思っちゃいました。 それに、これでにいさまの好みがわかっちゃったら、これからの姫のお料理はいっそうにいさまに気に入られることになっちゃうし・・・ これからも姫のお料理をにいさまに食べてもらえるためにも、今日はにいさまの好みを調べる日ですの 「うーん、僕の好きな料理か・・・白雪の作ってくれるものはどれも美味しいからなぁ・・・うーん・・・」 姫がにいさまに好きなお料理を聞いたら、にいさまはとっても真剣に悩み出して・・・ やっぱりにいさまは、世界一やさしいにいさまですの 適当に「アレが食べたい」って言ってくれても良いですのに・・・ 姫のどんな小さな悩みでも真剣に応えてくれる・・・だから姫は、にいさまが世界で一番大好き! 「そうだ!昔、白雪が作ってくれた卵料理が食べたいな」 「卵料理・・・ですの?」 「うん。ずいぶん昔に白雪が作ってくれた料理で、たしかこんな感じの・・・」 にいさまが説明してくれたのは、オムレツみたいな感じでした。 それで、姫、さっそく、オムレツを作りました。 「にいさま、できました!姫特製、ふわふわオムレツ、スペシャルキノコソースがけ。こんにゃくを入れて不思議な食感が楽しめるようにした、姫の力作ですの!」 にいさまはとっても美味しそうに姫のオムレツを食べてくれたんですけど・・・ 「うん、とっても美味しいよ。・・・美味しいんだけど・・・でも、昔、つくってくれたのとは、ちょっと違うな」 「そう、ですの」 それから、姫、今までに作ったことがある卵料理を作り始めました。 ハムやチーズの具沢山オムレツ。スペイン風オムレツ。素朴なプレーンオムレツ ひょっとしてにいさまの思い違いかと思って、オムライスとか卵焼きとかスクランブルエッグとかも作ってみたんですけど・・・ 「うーん。どれも美味しいんだけど・・・昔、食べたのとは違うなぁ」 「そう、ですの」 あーん、にいさまの思い出の卵料理ってなんですの? にいさまは「へんなリクエストをしてゴメンね。でも、もう十分にごちそうになったから、そんなにがんばらなくてもいいよ」って言ってくれましたけど・・・ 姫はにいさまのお料理番なんですから、ぜったいににいさまの思い出の料理を作ってみせるんですの! だけど・・・たぶん、そんな姫の気持ちが空回りしてしまったのだと思うんですの 姫、小麦粉の入ったボウルをひっくりかえしてしまって・・・粉だらけになっちゃいました。ケホケホ 「白雪!だいじょうぶかい?」 「にいさま・・・姫、失敗しちゃったですの」 「とりあえず、お風呂に入って」 「はい・・・にいさま」 チャプチャプ 「ふう」 姫、湯船につかってさっきの失敗のことを思い出してました。 あんな失敗をしたのは久しぶり・・・たぶん、ここ2、3年はこんな失敗したことなかったんじゃないかしら? それに、あんな姿を、にいさまに見られてしまうなんて・・・いやーん、姫、恥ずかしいですの そういえば、姫も昔はいっぱい失敗してましたわ お鍋をひっくりかえしちゃたり、裏返そうとしてフライパンを動かしたらお料理が飛んでいっちゃったり それから、お砂糖とお塩を間違えたこともあったし、手際が悪くて固まらずにぐちゃぐちゃになったり、焼きすぎて焦がしちゃったこともあったりして・・・ でも・・・でも、にいさまは姫の失敗作も「見た目は良くないけど、意外と美味しいよ」って言ってくれて それから「失敗作でこれだけ美味しいんだから、白雪は料理の天才だな」って姫を励ましてくれたんですの やさしいにいさまのために思い出の料理をつくってあげたいけど けれど、にいさまの思い出の料理って、いったいどんな料理なんですの? なんとか、そのお料理をつくったときのことを思い出せないかしら? 昔のこと・・・昔のこと・・・ うーん・・・ 昔のことをって思ったら、姫、失敗料理ばっかり思い出してしまいました。 あーん、にいさまにあんなものを食べさせてたなんて、姫、恥ずかしいですの ・・・あれ?失敗料理? そのとき、姫、突然あの日のことを思い出したんですの あの日。 姫がまだ全然お料理が上手じゃなかったころ、にいさまのために一生懸命、おぼえたてのオムレツを作ったときのこと・・・ 「そうですの!」 姫、それを思い出したら、もういてもたってもいられなくなって、お風呂から上がって、急いでお台所へ行きました。 「うわっ!白雪、そんな恰好でなにやってるの!?」 「姫、思い出しました。にいさまの思い出の卵料理」 姫が作ったのは、ところどころコゲコゲで形もめちゃくちゃで、とってもお料理とは言えないようなもの 「白雪、どうしちゃったの?どこか具合いでも悪いの?」 「いいから、にいさま、食べてみて」 「うん・・・モグモグ・・・・・・はっ!?・・・コレ・・・コレだ!この味だよ。懐かしいなぁ」 やっぱり・・・ にいさまが覚えていたのは姫の失敗作の味 姫が今ではぜったいに作らない味ですの 「でも、にいさま。それは失敗作ですの」 姫がそう言うと、にいさまは、えっ?って顔をして、でも、こう言いました。 「失敗作でこれだけ美味しいんだから、やっぱり白雪は料理の天才だな」って うふふ にいさま。姫のやさしいにいさまは、やっぱり世界一ステキなにいさまですの 姫、にいさまの思い出に残るようなお料理を、これからもいーっぱい、つくっていきますから だから、にいさま これからも姫のお料理を食・べ・て・ね |
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