お花見
今日は、お兄ちゃまと一緒にお花見に来ています!
ここの河原の土手には、道沿いに桜がいっぱい植えてあって、春になると川にそって桜色の壁ができたみたいで、とってもキレイなの
ここら辺では、わりと有名な所らしくって、遠くの街からも見物にくる人がいて、桜が咲く時期になるとちょっとしたお祭りみたいな、すごくにぎやかな場所になるんだぁ
「うわぁー、人がいっぱいだね」
今日はお天気も良くって、風もそんなに強くないし、絶好のお花見日より!
・・・って、えへへ。みんなもそう思ったみたい
土手沿いの道は桜を見に来た人たちで、すでにいっぱいになってました。
それに道に沿って、出店まであったりして、あちこちでいろんな人の声があふれています。
それから、美味しそうなソースの匂いも・・・
あっ、あそこのたこ焼き、とっても美味しそう・・・ゴックン
「うーん、どこもいっぱいだなぁ」
お兄ちゃまと一緒に通りにそって歩いたけど、もうどこも人でいっぱいで、花穂たちが座る場所はないみたい
あーあ、せっかくお兄ちゃまのためにお弁当作ってきたのに・・・
このお弁当、お兄ちゃまと一緒に食べようと思って、朝早起きして作ってきたの
ママにもちょっと・・・えっと、かなり手伝ってもらったけど
でもでも、いっしょうけんめい作ったから、ぜったいぜったいお兄ちゃまに食べてもらおうって・・・思ってたんだけど
あーん、これじゃあ、お兄ちゃまとお花見できないよぉ
「そうだ、良い場所があるよ」
あちこちを歩きまわった後、お兄ちゃまはそう言いました。
それで、お兄ちゃまの後について歩きだしたんだけど、だんだんと桜が咲いている場所から離れて行って・・・
お兄ちゃま、どこ行くのかな?
お兄ちゃまに連れられて来た場所は、桜が咲いている場所からちょっと離れた、あんまり人がこないような小さな原っぱでした。
そこは、ちっちゃなお花がいっぱいいっぱい咲いていて・・・わぁ、まるでお花のじゅうたんみたい
「キレイだろう?」
「うん!」
「ここでお花見しよう」
「え?でも桜は・・・」
「花は桜だけじゃないだろう」
うーん、花穂たち、お花見に来たのに桜を見なくていいのかなーって、思ったんだけど・・・
そうだよね
春に咲くのは桜さんだけじゃなくって、こんな小さなお花さんも、いっしょうけんめい咲いてるんだよね
このお花さんたちは、こんな場所にひっそりと咲いていて、桜さんみたいにみんなから誉められることはないけれど、がんばって咲いてる
そう思ったら、花穂、このお花さんたちを、がんばれって応援したくなったよ
ちっちゃなカワイイお花さんたち、今日は花穂たちが、お花さんたちを誉めてあげるね
結局、今日はその場所でずっとお花見してました。
今日はお兄ちゃまと一緒に桜は見れなかったけど、がんばって咲いてるお花さんたちが見れて良かったです。
それに、お花さんたちを見ながら、お兄ちゃまと一緒に食べたお弁当。とっても美味しかった。えへへ
その夜
ピンポーン
晩御飯の後、今日のことをママに話していたら、お兄ちゃまが花穂のお家にやってきました。
「やあ、花穂、今から桜を見に行こう」
「えっ!?でもこんな夜だと、桜さん見えないよ?」
「いいからいいから」
花穂たち、昼間行った、あの河原にまた行きました。
ここは灯りがないから、夜はとっても暗くって、一人だとちょっと怖い・・・今はお兄ちゃまがいるから大丈夫だけど
でも、お兄ちゃま、すごい荷物を抱えていたけど、何するつもりなのかな?
「これをここに置いて・・・よし、準備完了。それじゃあ、いくよ」
パチッ
パッ
パッ
パッ
「うわぁっ〜」
お兄ちゃまが持ってきたのはたくさんのライトでした。
そのライトの光が桜を照らして・・・わぁ〜、とってもキレイ
ライトがつくまでわからなかったけど、桜さんは、こんな夜でもキレイに咲いてるんだね
それから、持ってきたシートの上に座って ─少し寒くなってきたから、一つの毛布に二人でくるまって・・・えへへ、ちょっとドキドキ─
しばらくお兄ちゃまと一緒に桜を眺めてました。
桜を見ていたら・・・
お兄ちゃま・・・花穂、桜さんを見ていて思ったことがあるの
桜さんは、みんなが見てない夜でも、いっしょうけんめい咲いていて
みんなが見てなくてもがんばってるんだなぁーって
だから・・・
だから桜はキレイ、なのかな?
みんなが、見てても見てなくても、がんばってる桜さん
あのちっちゃなお花さんたちも、あの場所で、きっと今もがんばってる
みんなみんないっしょうけんめい咲いてる
みんなみんながんばって咲いてるから・・・だから
「お兄ちゃま。花穂ね、なんとなくわかったような気がするよ。・・・お花さんがキレイな理由が・・・」
お兄ちゃまは何も言わず、にっこり笑って花穂の頭を撫でてくれました。
「だから花穂・・・もっと、・・・ふわぁ・・・もっと、がんばる・・・ね・・・」
Zzz...
「おやすみ、花穂」
お兄ちゃまの声が聞こえた気がしました。
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