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名探偵四葉VS美少女怪盗クローバー(後編)
─ さよならクローバー ─

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<< 前回までのあらすじ >>

美少女怪盗クローバーと対決する四葉と兄
最後の問題もクリアしクローバーを追い詰める
しかし、クローバーの正体は四葉そっくりの少女だった。
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「これは四葉くんだよ」
「わー!やっぱり双子なんだー!二人一緒じゃダメディスカーッ!」
「兄くん、落ち着きたまえ・・・確かに、これは四葉くんだが、本物ではない」
「えっ?四葉なのに・・本物じゃない?」
「これは・・・四葉くんの・・・複製人間(クローン)だ」
「ク、クローン!?ホントに?・・・でも、なんでそんなことがわかるの?」
「私が・・・作った」
「は!?」
「私が作った」
「・・・」

クローンなんてそう簡単に作れるのか・・・でも千影ならやりそうだ

「しかし、なんでそんなものを・・・はっ!?ま、まさか、千影、四葉のことを・・・」
「兄くん」
千影がキッと睨む。コワイ

「ううっ、ゴメン・・・だって四葉のクローンを作ったって言うから・・・」

すると千影はちょっと残念そうな顔をして言った。

「本当は、兄くんのクローンが、できるはずだった・・・」
「兄チャマのですか?四葉もほしいデス」
四葉が千影の言葉に反応して言う。
でも、四葉。僕のクローンなんか手にいれて何するつもりだ

千影が話を続ける

「クローンの材料に、兄くんの体の一部が必要だったから・・・兄くんの部屋に落ちていた毛を、使ったんだ・・・でも、どうやら・・・それは四葉くんのものだったらしい・・・」

ふうん、なるほど、それで四葉のクローンが・・・って納得して良いのか?

「あれ?・・・僕の部屋にって、千影、最近僕の家に来たことあったっけ?」
「いや・・・私が訪ねて行ったとき、兄くんはどこかへ出かけていたよ」
「え?それじゃあ、どうやって家の中に入ったの?」
「私が兄くんの家を訪れたとき、"たまたま"、玄関にカギがかかっていなくて・・・」
「"たまたま"?」
思いっきりアヤシイ

「ああ、"たまたま"、カギがかかっていなくて・・・悪いとは思ったが、兄くんの手を煩わせないように・・・早々に用を済ましてしまおうと・・・思ったんだ」
「・・・」
まあ、カギが壊されなかっただけましな方か・・・って、これで納得してホントに良いのか?

「しかし、驚いたよ。朝、目が覚めたら・・・四葉くんのクローンが部屋にいなかったから・・・大抵、クローンは自分から動きまわるようなことは、しないんだ・・・魂が宿っていないからね」
「えっ!?でも・・・」
今日一日、そのクローンに、さんざん走り回らされたぞ

千影がクローバーを見ながら言う。
「きっと、その服に残っていた"想いが"クローンを動かしてしまった・・・のだろう」

「この服が?」
クローバーを見た。
今は逃げるそぶりも見せず、僕たちの会話を聞いている。
この子がクローンで、しかも服の妙な力で動いてる、だなんて・・・普通誰も信じないぞ。でも千影の言うことだからなぁ

「物は、大事に使うと・・・それを使っていた人の"想い"が乗り移るんだ。大事にすればするほどに・・・その力は大きくなっていく。きっと四葉くんはその服を・・・大事にしていたんだね」
「いやぁ、それほどでも、デス〜」
四葉が照れ笑いする。
物を大事にすると、"想い"が乗り移るか・・・
四葉の使っていた物が、突然「兄チャマ、チェキ!」とか言いだして・・・ううっ、ホントにありそうで怖い


「そうか、その服が・・・あれ?でもヘンだぞ」
「ん?何がヘンなんデスか?兄チャマ」
「クローバーの服がクローンを動かしてるのは良いんだけど・・・なんで千影がその服を持ってたんだ?」

千影がクローンを作ったのは、この際置いておくことにして、クローバーの服を持っていたのはおかしい
千影、まさか四葉の家にも忍び込んで・・・

すると千影は僕を不思議そう見ながら言った。
「それは兄くんの部屋にあったものだよ・・・、兄くんの、結果的には四葉くんのだったが・・・毛を採取したときに、兄くんの部屋にその服があって・・・それで、その・・・つい持ってきたんだ」
「えっ!?僕の部屋に?」

そう言われて思い出した。
この前、咲耶から押し付けられて・・・たしか、あとで四葉にこっそり返そうと思って、とりあえず自分の部屋に置いてたのだけど・・・今の今まで、すっかり忘れていた。
このところ忙しくて、部屋の掃除とかもしてなかったから、置いていたことも無くなったことも、ぜんぜん気付かなかった。

「それを見たとき、とても強い力を感じたよ・・・きっと兄くんと近い距離にいるのに・・・相手にしてもらえなかったから・・・"想い"が一層強まったんだ・・・と思う」

てことは、もしかして僕がほったらかしにしてたから、こんなことをやったのか?
千影は静かにうなずく
「その服は・・・兄くんと、とても遊びたがっていた・・・みたいだからね」
「・・・」
ひょっとして、今回の騒動の原因は・・・僕?


「でも、千影ちゃんはスゴイデスー。謎を次々に説き明かして・・・ムムム、もしかして千影ちゃんも名探偵だったのデスか?ヤヤッ、これは強力なライバル出現デス」
「ホントだよ。服の気持ちまで分かるなんて、スゴイな」
「それは・・・兄くんはこんな服装が好みなのかと、着てみたから・・・」
「えっ?千影、今なんて言った?」
ボソッと言うから千影の言葉がよく聞き取れなかった。千影は何て言ったんだ?

「いや、なんでもない・・・それより、もうすぐ夜になる。クローンは日の光が弱くなると・・・消えてしまうんだ」

「えっ!消える・・・」
千影の言葉を聞いたクローバーは動揺した。
よろよろと後退りし、手にしていたマスクをギュッと握り締める

「わたしが、消える?」
独り言のように言うと僕たちに背を向け、走りだした。

「あ、待って」
僕たちはクローバーを追い掛けた。


◇◇◇◇◇


空はオレンジ色から、青く変わろうとしている。
あれからクローバーを追い掛け、気が付けば僕たちは河原まで来ていた。

ここを最後の場所にしようと言うのか、クローバーはもう逃げようとはせず、ただ黙って、落ちて行く夕日を見ながら川岸に立っている。

クローバーに追い付きはしたが、しかし、これからどうしてよいのか分からない
今からいなくなってしまう人に、何て言えば良いのだろう?


「わたし、兄チャマともっと遊びたかったデス」

クローバーは僕たちに背を向けたまま、誰かに聞かせるでもなく小さく言った。

振り回されて大変な一日ではあったが、それがもう終わるとなると、なんだか物悲しくなる。
それに、クローバーは後少ししか僕たちと一緒に居られないのだ
やるせない


「あの・・・」

四葉がクローバーに話しかけようとしたとき、風がフワッと吹いた。

風に飛ばされるクローバーの帽子
みんながその帽子の行方を目で追う
四葉は手を伸ばし、それをハシッとつかみ取った。

「危なかったデス」

四葉が帽子をクローバーに返そうとしたが、そこにクローバーの姿はなく、服だけがポツンととり残されていた。

「時間切れ、か」
千影がポツリと言った。


四葉は両手で帽子を抱きしめた。

『兄チャマともっといっぱい遊びたいデス』

帽子から、そんな声が伝わって来るようだ


「でも、四葉は・・・」
今日のことを思い返す。
咲耶の怖い顔が目に浮かんだ。

四葉はさらにぎゅっと帽子を抱きしめる

「こんな大騒ぎになって・・・兄チャマ、四葉のこと迷惑じゃないデスか?・・・咲耶ちゃんや、みんなは・・・きっと、四葉のこと迷惑だと、思ってるデス。・・・だから四葉は、もう・・・兄チャマと・・・みんなと・・・」

「四葉・・・僕は四葉のこと迷惑に思ってないよ。だから、遊びたいときは何時でも来て良いんだよ」
「でも、咲耶ちゃんが・・・」
「あはは、大丈夫大丈夫。何かあったら、僕がちゃんとフォローするから。もし咲耶が怒ったとしても、僕がなんとかするから・・・妹の世話は兄の仕事だしね。・・・だから、四葉は、四葉がやりたいことをやって良いんだよ」
「兄チャマ・・・」
「それに四葉が元気ないと、なんか調子が出ないんだ。きっとみんなもそうだよ」
「兄チャマー!」

僕に飛び込んできた四葉をしっかりと受け止める。
そして胸の中で泣いている四葉の頭を優しく撫でてあげた。

しばらくして四葉が僕に抱きついたまま言った。
「えへへ、兄チャマ・・・あの、そのうち、クローバーがまた挑戦してきそうな気がするデス」
「あはは、それは望むところだよ」
四葉は小さく笑った。

これで、忙しい休日は終わ・・・


「あーーーーーーーー!!!」

突然、河原中に響き渡る大きな声。咲耶の声だ
振り返ると、いつのまにか咲耶が近くいた。
咲耶は四葉の方を指さし、その手はプルプルと震えている。

「やっぱり、四葉ちゃんだったのね!」

そう言いながら咲耶がズンズンと進んできた。
咲耶の後ろにいた千影は「一応、説明はしたのだが・・・」と申し訳なさそうな顔をしている。
でも、クローンだと言っても、すでにその人がいないんだから、信じてもらえない、よなぁ

「偽物とかなんとか言いながら、やっぱりあのクローバーは四葉ちゃんじゃない!」
「よ、四葉じゃないデス」
「じゃあ、その帽子はなによ」

四葉は、まだクローバーの帽子をしっかりと握っていた。

「こ、これはさっき風にとばされそうになったのを、四葉が・・・」

四葉の必死の弁解も、咲耶に届いていないようだ。
咲耶は般若の顔になった。コワイ

「あ、兄チャマー、助けてー」

四葉は僕に助けを求める
でも、怒りモードの咲耶を相手にするのは・・・いかん、いかん、さっき咲耶が怒ってもなんとかするって言ったばかりだった。

「あ、あの咲耶・・・あのクローバーは・・・」


僕たちが言えば言うほど、咲耶の怒りの炎は燃え盛る。

「なによ、こんなモノ」
咲耶は四葉から帽子を引ったくった。
そして、それを川へ・・・
「あっ!・・・あれ?」

・・・それを川へ向かって投げようとしたが、不意にやめた。
足元にあったクローバーの服に気付いたらしい。
咲耶はそれをじっと見ていたが、ひょいと拾い上げると、腕に抱えて、走り去る。

「あー、それは四葉のデスー!」
と四葉が叫んでも、咲耶は止まる気はさらさらない
あっと言う間に、土手の階段を登りきり、走り去ってしまった。

(はぁ、なんとかするとは言ったものの、咲耶を説得するのは一苦労だよな)
ひょっとしたら、二度とあの服にはお目にかかれないかもしれない
そうなったら四葉に何て言えば良いのか・・・

「まあ、とにかく帰るか・・・もう日も暮たし」
「兄チャマ、咲耶ちゃんが・・・」
「妹の世話は兄の仕事だって言っただろ、僕に任せて」
とは言うものの、トホホ

空は、さらに暗くなる。


◇◇◇◇◇


僕たちが土手にある階段のところまで来たとき

「おーほっほっほーっ!」
まるで女王様のような高笑いが聞こえた。
なんだか・・・咲耶の声っぽかったが・・・き、気のせいだよな(汗

「兄チャマ、あそこ!」
四葉が階段の上の方を指さす。

階段の一番上には、羽がついた帽子、派手派手刺繍の服、赤いマントにマスクをつけた人物が立っていた。
長い髪を左右に分け結わえた髪型と、背格好からすると咲耶なのだけど・・・
咲耶がクローバーの服を着ている?ありえないヨ
と言うか、サイズがチガイすぎて、アブナイです・・・いろんな意味で

咲耶が誇らしげに胸を張る。
ボタンの一つがブチンという音と共に弾け飛んだ。


「さ、さ、咲耶!・・・な、何してるんだ、そんなとこで!」
ス、スカートがっ!・・・み、見えちゃうヨ!

すると咲耶はちっちっちっと指を小さく動かし言った。
「ノンノン、お兄様。私の名前は、美少女怪盗クローバーよ」

その言葉に四葉が興奮する
「ス、スゴイデス、兄チャマ!美少女怪盗クローバーがアダルトチェンジしてパワーアップデス!」

「うふふ、お兄様のハートをゲットしに参上よ お兄様、覚悟してね♪」
「むむむ、そうはさせないデス!美少女怪盗クローバー!」

熱血する四葉の横で僕は頭を抱えた。
「なんでこんなことに・・・」

「おそらく・・・」
僕の後ろにいた千影が話しかける。

「咲耶くんはあの服に操られているね」
「あの服に?」
「ああ、まだ遊び足りないみたいだよ・・・兄くんと」
「そ、そんな〜」
僕はへなへなとその場へ座り込んだ。


僕たちの頭上高くでカラスがカァーと鳴いた。


─ 終わり ─


その後

「今日はヒナがかいとうさんだよ!おにいたま、いーっぱい遊んでね。くしししし」

妹たちの間で美少女怪盗クローバーごっこが流行ったという


あとがき

「名探偵四葉VS美少女怪盗クローバー」お楽しみいただけたでしょうか

四葉の日記念に四葉ちゃん主役のSSを書いていたつもりが、いつのまにやら咲耶ちゃんが主役になってました。
というかノリだけで書いたSSですので、最後までどうなるか作者にも分かりませんでした(汗
みんなついてきてくれたのかすごく不安です。


<<みなさまへお願い>>
このサイトでは「名探偵四葉VS美少女怪盗クローバー」の挿し絵を大募集デス!
特にクローバーの服を着た咲耶ちゃんの絵!
お願いプリ〜ズ (^_^)/



k16rさんから、”あの”咲耶ちゃんのイラストを頂きました。
ん?咲耶ちゃん、つけてないっ!?
(*゜∀゜)=3


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