プスプスプス・・・ポンッ
「きゃー!もうちょっとで完成だったのにー!」
鈴凛の失敗
今度の発明品は、とってもすごいんだから!
じゃじゃーん!超小型ナビゲーションロボット、その名も「ころナビくん」
ソフトボールぐらいの大きさに便利な機能が満載よ!
まずはメインのナビ機能だけど
なんと、この「ころナビくん」が目的地まで、転がって案内してくれるの!
ねっ!スゴイでしょ?
どんな場所にだってコロコロ〜ッて、転がっていけちゃうし、ボディ表面は特殊素材を使ってるから、少々の斜面でも滑らずにぐんぐん登っていけるわ!
階段があってもぴょんぴょん飛びはねて進んでいけるし
これで案内できないところは、海の中か空の上ぐらいね
また、補助機能としてFM、AMチューナーがついているから、自然災害にあったときにもとっても便利
時計、アラーム機能もついているから旅のお供にも、もってこいね
おまけに、無線装置を内蔵しているから、いざとなったらこれで通信することもできるの
さらに最終手段として、小型発煙筒を内蔵しているから、仮に無人島に漂着しても大丈夫!
まさに究極のナビシステム!
・・・の予定だったんだけど・・・
たはは、今、私の手のひらの上でコゲコゲになってます。
あーあ、やっぱり新素材に手を出したのが間違いだったのかなぁ
でも、スペースシャトルにも使われてる素材って聞いたら、やっぱり技術者としてはふつう使ってみたくなるでしょう?
お買い得品だったし・・・
でも・・・今考えたら、無難にいつものやつで組めばよかったかな・・・
・・・
うーん、まあ、今更こんなこと考えてもしょうがないよね
とりあえず、アニキにメールして
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アニキへ
ごめ〜ん
事故ったので、今日の新発明品の発表会は中止します。
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はぁ
なんだか私、最近失敗ばっかりしているのよねぇ
どうしてこうなるのかしら・・・もしかして、私、才能ないのかなぁ・・・
はぁ
・・・
あー、やめやめ
まあ、こんなときは、アレよね
ネットするのが一番!よね
ネットオークションでいいモノ出てないかなー
あ、この前買ったICチップの解析データとか流れてるかも
うーん、でもどうせ1日暇になったんだから、この際、海外の研究資料をゆっくり読むのもいいかもね
とあれこれ考えながら、パソコンの電源を入れたんだけど・・・
起動したらいきなり「ハードディスクの空き容量が少なくなっています」って警告メッセージが
うわぁ、このハードディスク、つい最近増設したばっかりなんだけど・・・
やっぱりメカ鈴凛のデータが容量とってるのかな?
最近、行動範囲が広くなってきたから、テストデータが以前とは比較にならないぐらい大容量になってるのよねぇ
それに、メカ鈴凛用の新しい思考ルーチンも開発してるから、ホントいくらディスクがあっても足りないのよ
うーん、どうしよう?
と悩んでいてもしょうがないので、パソコンからいらないデータを消していくことにしました。
ううっ、なんかデータの整理で今日が終わりそうな予感
カチャカチャ
「あれ?・・・これ、なんのファイルかしら?」
データの整理をしていたら、見覚えがないファイルが・・・
ファイルの作成日付はちょうど1年前だけど・・・なんだろう?
とりあえずファイルを開いてみたら、日記のようでした。
それには・・・
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○月×日
今日、新発明品をアニキに披露
・・・するはずだったんだけど・・・爆発して失敗。
あーん、なんでー
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・・・
がーん
1年前も、同じようなことやってたのね、私
しかも爆発して失敗ってとこまで一緒なんて・・・
「私、ちっとも成長してないなぁ・・・」
もしかして、アニキ、私にあきれてるかも
失敗ばっかりしている私に・・・
ぜんぜん成長しない私に・・・
いつもいっぱい助けてもらってるのに・・・
そのとき ピンポーン と呼び鈴がなって、アニキがウチのラボにやってきました。
あれ?アニキどうしたのかな?今日は発表会中止するってメールしたのに
アニキは、事故ったとメールに書いてあったから、ケガでもしてないか心配になって見に来たんだって
わぁ、やっぱりアニキって、やさしいのよねぇ
でも・・・
「ごめんねアニキ。私、失敗ばっかりで・・・
あ、あのね、さっき偶然、1年前の日記を見つけたの。そしたら、ちょうど1年前の今日も発明品が爆発して失敗したんだって・・・あ、あははは・・・笑っちゃうよね・・・
私ってば、ぜんぜん成長してない、ね・・・」
あれ?あれれ?
なんだか私、
悲しくて・・・
情けなくて・・・
涙が、出そう
そのときアニキは、うつむき加減の私の頭に、ぽんと手を置いて「そんなことないよ」って
でも・・・
「でも、私、いつもいつもアニキに助けてもらってばっかりで・・・それなのに私、アニキにはなにも・・・なにも・・・」
あ、だめ。私、もう・・・
そのときアニキが「鈴凛、あのね」って、私の手をそっと握りしめながら言いました。
「えーっと、僕は思うんだけど、失敗するってことは、新しいことに挑戦しているってことだと思うんだ」
「?新しい、こと?」
「そう、新しいこと。やったことないこととか、今までは難しくて手が出せなかったこととか・・・そういうことに挑戦すれば、誰だって失敗ぐらいするさ。いきなり最初から全部が全部上手くいく、なんてことはほとんどないよ。
むしろ、全然失敗がない方が心配かな。それって、できることしかやっていない。成長してないってことだろう?」
「そ、そうなのかな」
「そうさ。失敗の数だけ人は成長する。鈴凛はちゃんと成長しているよ。僕はよーく知ってるからね、それを」
アニキはそう言って、にっこり微笑みました。
なんだか不思議・・・
アニキにそう言われたら、今までくよくよしていたのがウソみたいに、ぱぁっと周りが明るくなったように感じて
今までの失敗が、全然たいしたことないように思えてきて
それに、アニキが私のこと、ちゃんと見てくれてたことが、すごくうれしくって
私・・・
あれれ?
今度は、うれしくて、涙が出そう。えへっ
・・・って感動してたら、アニキは「なんせ、僕は鈴凛の失敗をいーっぱい見てきたからね」って、ニヤニヤ笑いながら言うの!
もう、せっかく良い場面だったのに!アニキってば・・・
でも
アニキ、ありがとね
私、これからもがんばれそうよ
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