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花穂のお誕生日ケーキ



今日は、花穂の大好きなお兄ちゃまのお誕生日です!

今日はね、とってもすごいんだよ
それはねぇ・・・これ!
この、大きなお誕生日ケーキ!

あのね、ママのお友達が、洋菓子屋さんをやってて、花穂もよくケーキとかシュークリームとか買いに行くんだけど
あ、そういえば、ここのパンプキンプリン、とっても美味しいの
花穂もときどき学校の帰りに、お友達といっしょに行ったりするんだぁ
たまに、ママにないしょで、お菓子とかもらっちゃうこともあったりして・・・えへへ

えっと、それでね、花穂が「もうすぐお兄ちゃまのお誕生日なんだぁ」って話をしたら、「花穂ちゃんはおとくいさまだから」って、特別に大きなケーキを作ってもらったの
えへへ、花穂、お菓子大好きでよかったぁ

ケーキの上には、チョコで大きく「お兄ちゃま、お誕生日おめでとう!」の文字を書いてもらいました。
お兄ちゃま、喜んでくれるかなぁ


でも、花穂、心配なことが・・・
あのね、花穂、その・・・よく転んじゃうから
お兄ちゃまのお家に行く間に、転んでケーキを落としたりしないかなーって、とっても心配なの



それで、今、ケーキを持って、お兄ちゃまのお家の方へ、ゆっくりゆーっくり歩いています。

いつもは、空に浮かんでる雲を見て「わぁ、あの雲、お兄ちゃまみたい」とか考えてたら、転んじゃったりとか
転ばないように足元を見て歩いていたら、電柱にぶつかっちゃったりとか
ワンちゃんが急に、ワンワンって吠えるから、びっくりしちゃって、しりもちついちゃったりとか
お兄ちゃまのお家の近くまできたら「もうすぐ、お兄ちゃまのお家だぁ」って思って、つい走りだしちゃうから、それで転んじゃったりとか
とにかくいろいろあって、転んじゃうことが多いの

だから、今日は特別にゆっくりゆっくり歩きました。


そして、なんとか無事にお兄ちゃまのお家に到着!
よかったぁ、今日は1回も転ばなかったよ
今日は良いことあるかも。えへへ


でも・・・
でもね・・・花穂、やっぱり、失敗しちゃったの

お部屋に入ろうとしたとき、躓いて、ケーキが入った箱を・・・落としちゃった

ゴトンゴトンって箱が転がっていって・・・
もしかしたら中は大丈夫かも、って思って、神様にお願いしながら箱を開けてみたんだけど
そんな奇蹟のようなことが起きるわけなくて・・・中はめちゃくちゃになってました。
「お兄ちゃま、お誕生日おめでとう!」の文字も読めないくらいに・・・

うわぁーーーん
あんなに慎重に持ってきたのに
落とさないように、両手でしっかり抱えて持ってきたのに
いつも花穂をおどかすワンちゃんを避けて、わざわざ遠回りしてきたのに・・・
なのになのに・・・どうして?
最後の最後に、こうなっちゃうなんて
花穂、なんでこんなにドジなんだろう
これじゃあ、花穂、お兄ちゃまに見捨てられちゃうよぅ・・・グスン


すると、お兄ちゃまは、花穂の頭を優しく撫でてくれて、そして言いました。

「花穂、いっしょにケーキ作ろう」

「えっ!・・・でも、花穂、ケーキつくれないよ?」
「僕も作れない」
「?それじゃあ・・・」

「ケーキは作れないけど・・・ほら、こうやって・・・」
そう言って、お兄ちゃまは、箱の中からケーキのスポンジ生地だけをお皿に取り出して
「・・・これにクリームとかでデコレーションするぐらいならできそうだろう?」

お兄ちゃまは、無事だったスポンジ生地だけをとりだして、その上に新しくクリームやフルーツとかで飾り付けをしようって言いました。

わぁ、それなら、花穂にもできそう!
それに、これって、花穂の手作り「お誕生日ケーキ」ってことだよね

そう考えたら、花穂、なんだかとってもうれしくなりました。
さっきまでは、ケーキがめちゃくちゃになって、とってもとっても悲しかったのに
今は、花穂、すっごくワクワクしてるの
お兄ちゃま、ありがとう!



それから、お兄ちゃまといっしょに、お誕生日ケーキを作りました。
クリームをぬって
フルーツをのっけて
チョコで飾りつけをして
とーっても楽しかったぁ

花穂、ケーキの上に ─ちょっと形がへんになっちゃったけど─ チョコでおっきく文字を書きました。

「お兄ちゃま、おたんじょうび、おめでとう!」



それから、すみっこの方に、ちっちゃく書いたの
「お兄ちゃま、大好き
えへへ

─ 終り ─


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